美容室で専従者に20万円の給与は妥当?

美容室で専従者に20万円の給与は妥当? 税理士が教える美容室経営

美容師の専従者給与はいくらが適切?20万円払っている美容室オーナーもいるって本当?

美容室を経営していて、ご家族に手伝ってもらっている方も多いのではないでしょうか。でも、専従者として働いてもらっている家族には、いくらくらいの給与を払えばいいのかわからないという悩みを抱えている経営者の方も少なくないようです。

中には、月額20万円も専従者給与として支払っている美容室オーナーの話を耳にして、「うちの美容室でも同じくらい払わないといけないの?」と不安に思ったこともあるかもしれません。

でも、専従者給与の適切な金額は、一律に決まっているわけではありません。美容室の規模や収益状況、専従者の業務内容など、さまざまな要因を総合的に考慮して決める必要があるのです。

本記事では、美容室経営者の方々が抱える専従者給与に関する疑問や悩みを解決するため、専従者給与の基本的な仕組みから適切な金額の決め方まで、詳しく解説していきます。

これを読めば、専従者給与の適正水準がわかるだけでなく、節税のポイントもつかめるはずです。美容室の経営を改善するためのヒントが満載ですので、ぜひ最後までお付き合いください。

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専従者給与の概要

専従者給与とは

専従者給与とは、個人事業主が青色申告を行っている場合に、事業に専従する生計を一にする配偶者や親族に支払う給与のことを指します。この専従者給与は、一定の要件を満たせば、全額を必要経費として計上することができます。

専従者給与制度は、個人事業主の家族が事業に携わっている実態を適切に評価し、その対価を必要経費として認めることで、個人事業主の税負担の公平性を図ることを目的としています。この制度を活用することで、個人事業主は支払った専従者給与を必要経費に算入でき、節税効果を得ることができるのです。

ただし、専従者給与を必要経費として計上するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。例えば、専従者が生計を一にする親族であること、年齢が15歳以上であること、事業に6ヶ月以上専従していることなどです。これらの要件を満たさない場合、専従者給与を必要経費として計上することはできません。

青色申告と白色申告の違い

青色申告と白色申告は、個人事業主が所得税の確定申告を行う際の申告方式の違いを表しています。青色申告は、一定の帳簿書類を備え付けて記帳し、その記帳に基づいて正しい申告をする方式で、白色申告に比べてさまざまな特典があります。

青色申告の特典としては、専従者給与を必要経費として計上できることに加え、青色申告特別控除(最大65万円)の適用や、純損失の繰越控除などがあります。これらの特典を受けることで、白色申告よりも節税効果を高めることができます。

一方、白色申告は、収入と必要経費を記載するだけの簡易な方式です。記帳の義務がない代わりに、青色申告のような特典は受けられません。ただし、白色申告でも一定の要件を満たせば、専従者控除として配偶者は最大86万円、その他の親族は最大50万円を必要経費に算入することができます。

個人事業主はそれぞれの状況に応じて、青色申告と白色申告のメリットを比較検討し、適切な申告方式を選択する必要があります。特に、専従者給与を活用して節税を図りたい場合は、青色申告を選択することが有利といえるでしょう。

専従者給与の適用要件

生計を一にする親族であること

専従者給与の適用を受けるためには、専従者が事業主と生計を一にする親族であることが要件の一つとなっています。生計を一にするとは、事業主と同居していたり、生活費を事業主が負担していたりするなど、経済的に一つの単位として生活していることを指します。

具体的には、事業主の配偶者や子供、両親、兄弟姉妹などが該当します。ただし、別居していても、事業主が生活費を負担しているなど、生計を一にしていると認められる場合は、専従者給与の対象となります。

生計を一にしているかどうかは、個々の事情によって判断されます。同居していても、生活費を別々に負担している場合は、生計を一にしているとはいえません。逆に、別居していても、事業主が生活費を負担している場合は、生計を一にしていると判断される可能性があります。

年齢要件:15歳以上

専従者給与の適用を受けるためには、専従者の年齢が15歳以上であることが必要です。これは、15歳未満の場合、労働基準法により労働が制限されているためです。

ただし、15歳に達していても、義務教育を終了していない場合は、原則として労働が認められません。したがって、中学校を卒業していない子供を専従者として扱うことはできません。

年齢要件を満たしているかどうかは、原則として、その年の12月31日時点の年齢で判断します。例えば、その年の途中で15歳になった場合でも、12月31日時点で15歳以上であれば、専従者給与の対象となります。

事業への専従期間:6か月超

専従者給与の適用を受けるためには、専従者がその年を通じて6ヶ月を超える期間、事業に専従していることが必要です。ここでいう専従とは、原則として、その事業以外に兼業や別の仕事に従事していないことを指します。

例えば、事業主の配偶者が、年間を通じて事業に従事している場合は、専従者給与の対象となります。一方、配偶者が別の会社に勤務しながら、休日に事業の手伝いをしている程度では、専従しているとはいえません。

ただし、事業の性質上、通年での専従が困難な場合は、例外的に事業に従事することが可能な期間の2分の1を超える期間、事業に専従していれば、要件を満たすものとされています。例えば、季節的な事業で、年間の営業期間が4ヶ月しかない場合、その4ヶ月のうち2ヶ月を超えて事業に専従していれば、専従者給与の対象となります。

労務の対価として妥当な給与額

専従者給与は、専従者の労務の対価として支払われるものであるため、その金額は妥当なものでなければなりません。妥当性の判断基準としては、同業種や同規模の事業における従業員の給与水準や、専従者の職務内容、年齢、勤続年数などが考慮されます。

例えば、美容室で専従者として働く配偶者に対して月額20万円の給与を支払っている場合、その金額が同地域の美容室における従業員の平均的な給与水準と比べて著しく高額であれば、妥当性を欠くと判断される可能性があります。

また、専従者の職務内容に見合わない高額な給与を支払っている場合も、妥当性を欠くと判断されるおそれがあります。例えば、接客や掃除などの簡単な作業しか行っていない専従者に対して、経営者と同等の高額な給与を支払っている場合などです。

専従者給与の金額設定に当たっては、専従者の実際の労務内容や同業他社の水準などを踏まえ、適正な金額を設定することが求められます。税務署から妥当性を欠くと判断された場合、専従者給与の全部または一部が否認され、追徴課税を受けるリスクがあることに注意が必要です。

専従者給与の金額設定

労務内容に応じた適正額の算定

専従者給与の金額は、専従者の労務内容に見合った適正な額でなければなりません。適正額を算定する際には、専従者の職務内容や勤務時間、責任の度合いなどを考慮する必要があります。

例えば、美容室で専従者として働く配偶者が、接客、施術、店舗管理など幅広い業務を担当している場合、単に補助的な業務を行っている場合と比べて、より高額な給与を支払うことが合理的といえます。

また、専従者の勤務時間も重要な考慮要素です。フルタイムで働いている専従者と、パートタイムで働いている専従者では、支払う給与の額に差を設けることが適切でしょう。

専従者給与の適正額を算定する際は、事業主自身の報酬や事業所得との兼ね合いにも注意が必要です。事業主の報酬が少額であるにもかかわらず、専従者の給与が高額である場合、税務署から不適切な金額設定であると判断されるおそれがあります。事業主と専従者の報酬のバランスにも配慮しましょう。

他の従業員や類似職種の給与水準の参照

専従者給与の適正額を判断する際には、他の従業員や同業他社の類似職種の給与水準を参考にすることが有効です。同じ職務内容であれば、専従者であるか否かにかかわらず、同等の給与水準であることが望ましいといえます。

例えば、美容室で専従者として働く配偶者の給与を決める際は、同じ美容室で働く他の従業員の給与水準や、地域の他の美容室における同職種の給与相場を調査してみましょう。これらの情報を参考にすることで、専従者給与の適正な水準を把握しやすくなります。

ただし、単純に他社の水準と比較するだけでなく、自社の事業規模や収益状況なども考慮する必要があります。他社と比べて事業規模が小さい場合、同水準の給与を支払うことが難しいケースもあるでしょう。あくまでも参考として活用し、自社の実情に合わせて適切な給与水準を判断することが大切です。

また、専従者の能力や経験、貢献度合いなども考慮に入れる必要があります。他の従業員と同じ職務内容であっても、専従者の方が高い能力を発揮している場合は、それに見合った給与を支払うことも合理的な判断といえるでしょう。

月額20万円の妥当性と注意点

専従者給与の金額設定において、月額20万円という水準は、一つの目安として広く認識されています。この水準は、配偶者控除の対象となる給与収入の上限である年額103万円に相当する月額とほぼ一致しており、節税メリットとの兼ね合いから設定されることが多いようです。

ただし、月額20万円が妥当な水準であるかどうかは、一概にはいえません。前述のとおり、専従者の労務内容や勤務時間、他の従業員との比較などを総合的に勘案して、適正な金額を判断する必要があります。

例えば、美容室の専従者が、他の従業員と同等の職務内容で、フルタイムで働いている場合、月額20万円という水準が適正であるかは、慎重に検討を要します。同業他社の給与水準と比べて著しく低額であれば、専従者の貢献度合いに見合わない給与設定と判断される可能性もあります。

逆に、専従者の職務内容が軽微で、勤務時間も短い場合、月額20万円という水準は高額すぎるおそれがあります。税務署から、適正な金額設定ではないと判断されるリスクがあることに注意が必要です。

月額20万円という水準にとらわれることなく、専従者の実情に即して適正な金額を設定することが肝要です。また、専従者給与の金額設定は、税務署から質問を受ける可能性が高い事項の一つであることを認識し、合理的な説明ができるよう、根拠資料を整えておくことも重要でしょう。

専従者給与の手続き

「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出

専従者給与を支給するためには、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出する必要があります。この届出書には、専従者の氏名、生年月日、続柄、職務内容、給与額、支給方法などを記載します。

届出書の提出先は、原則として、その個人事業主が所得税の確定申告書を提出する税務署となります。届出書は、専従者給与の支給を開始する年の初めに提出するのが一般的ですが、年の途中で専従者を雇用する場合は、雇用開始日から2ヶ月以内に提出します。

届出書の作成に当たっては、記載内容に誤りがないよう十分に注意する必要があります。特に、給与額や支給方法は、実際の支給と合致している必要があります。届出内容と実際の支給が異なる場合、税務署から指摘を受けるおそれがあります。

また、届出書を提出する際は、専従者の雇用実態を明らかにするため、雇用契約書や出勤簿などの関連書類を整備しておくことが望ましいでしょう。税務署から質問を受けた際に、専従者の労務提供の事実を説明できるよう準備しておきます。

提出期限と変更時の対応

青色事業専従者給与に関する届出書の提出期限は、原則として、専従者給与を必要経費に算入しようとする年の3月15日までとなっています。ただし、年の途中で新たに専従者を雇用した場合や、事業を開始した場合は、そのときから2ヶ月以内に届出書を提出する必要があります。

一度届出書を提出した後、専従者の氏名や給与額、支給方法などに変更が生じた場合は、「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を提出します。変更届出書の提出期限は、変更のあった日から2ヶ月以内です。

専従者との雇用関係が終了した場合も、税務署への届出が必要です。この場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」の「備考」欄に、雇用関係の終了年月日を記載して提出します。

届出書の提出を失念したり、提出期限を過ぎたりした場合、専従者給与を必要経費として認められない可能性があります。届出書の提出は、専従者給与を支給するための重要な手続きであることを認識し、期限内に漏れなく提出するよう心がけましょう。

なお、届出書の提出は、税務署への書面提出のほか、e-Taxを利用したオンライン提出も可能です。オンライン提出を活用することで、書面提出に比べて手続きの利便性が高まるでしょう。

専従者給与の税務上の注意点

過大給与と認定された場合のリスク

専従者給与の金額が、税務署から過大であると認定された場合、支給額のうち適正と認められる金額を超える部分は、必要経費として認められません。過大給与と認定された部分は、事業主の所得に加算されるため、結果として事業主の税負担が増加することになります。

例えば、美容室の専従者である配偶者に対して月額30万円の給与を支給していたところ、税務署から適正額は月額20万円であると判断された場合、月額10万円の部分は必要経費として認められません。仮に、年間で120万円が過大給与と認定されれば、事業主の所得に120万円が加算され、その分の税負担が生じます。

過大給与と認定されるリスクを回避するためには、前述のとおり、専従者の労務内容や勤務時間、同業他社の水準などを考慮して、適正な金額を設定することが重要です。また、専従者給与の金額設定の根拠を明確にしておくことも必要でしょう。

万が一、税務署から過大給与の指摘を受けた場合は、給与額の算定根拠を丁寧に説明し、適正性を主張することが求められます。専従者の労務提供の実態を示す資料を用意しておくことで、税務署の理解を得られる可能性が高まります。

ただし、税務署との見解の相違が解消されない場合、更正処分を受けるリスクもあります。過大給与の認定は、追徴課税につながる重大な問題であることを認識し、適正な給与設定に努めることが肝要です。

社会保険や扶養控除への影響

専従者給与を支給することは、社会保険の適用関係にも影響を及ぼします。原則として、専従者は個人事業主に雇用される被保険者となるため、健康保険や厚生年金保険の適用を受けることになります。

専従者が被保険者となる場合、事業主は事業主負担分の社会保険料を負担する必要があります。また、専従者本人も被保険者負担分の社会保険料を負担することになります。社会保険料の負担は、事業主と専従者の手取り額に影響を与えるため、専従者給与の金額設定の際は、社会保険料の負担も考慮に入れる必要があります。

さらに、専従者給与の支給は、扶養控除の適用関係にも影響します。専従者が配偶者である場合、一定の要件を満たせば配偶者控除の適用を受けられます。しかし、専従者給与の支給額が配偶者控除の適用基準を超えると、配偶者控除の適用を受けられなくなります。

同様に、専従者が扶養親族である場合、扶養控除の適用基準を超える給与の支給は、扶養控除の適用を受けられなくなります。扶養控除の適用を維持しながら専従者給与を支給するためには、給与額を適用基準の範囲内に収める必要があります。

専従者給与の支給が社会保険料の負担増加や扶養控除の適用喪失につながるケースもあるため、節税効果だけでなく、トータルの負担増減を見極めることが重要です。個々の事情に応じて、最適な給与設定を行うことが求められるでしょう。

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美容室の専従者給与についてのまとめ

美容室の専従者給与について、その仕組みや注意点をご紹介してきました。専従者給与は、個人事業主である美容室オーナーにとって、節税対策として有効な手段の一つです。

ただし、専従者の労働内容や時間に見合った適切な金額設定が求められます。月額20万円といった高額な専従者給与を支給するケースもあるようですが、一律にこの金額が適切とは限りません。

美容室の規模や収益、専従者の働きぶりなどを総合的に判断して、適正な水準を見極めることが肝心です。

また、専従者給与の支給にあたっては、「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出をはじめ、必要な手続きを漏れなく行うことも重要なポイントです。

項目 ポイント
専従者給与とは 青色申告を行う個人事業主が、生計を一にする親族に支払う給与のこと
適用要件 15歳以上の親族、6ヶ月以上の専従、適正な労務対価など
給与の決め方 専従者の仕事内容や働きぶり、同業他社の水準などを考慮
必要な手続き 税務署への届出書の提出(新規・変更時)
注意点 過大給与の認定リスク、社会保険料負担や扶養控除への影響など

専従者給与の適正な運用は、美容室経営の健全化につながります。自社の状況を的確に把握し、節税メリットを活かしながらも、適切な金額設定を心がけることが大切ですね。

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